少しだけ曲解説
「白いうた青いうた」
作曲:新実徳英 作詞:谷川 雁
作曲家の新実徳英が詩人の谷川雁(たにかわがん)とのコンビで作った「白いうた青いうた」のなかから,7曲選びました。この曲集「白いうた青いうた」は,新実がまずメロディーを作りその曲想からイメージをふくらませた詩人の谷川が詞をつけるという方法で作られています。コンパクトにまとめられた新実の曲の美しさもさることながら、谷川の詞の深遠さには驚くばかりです。100曲を目標に創り始めましたが,残念ながら1995年2月に谷川の死去により,未達となりました。しかし,残された53曲はどれも美しいメロディーとその音楽にマッチした,しかも奥深い内容の詩で構成されています。新実はまた、「曲先行詞後付けという荒技にもかかわわらず、音と詞の幸福な結びつきがここにある。これはこの詩人が音の表情・性格、その全体をどれほど見事に感知したかの証でもある。詩と歌うための詞の違いをはっきりと認識できた数少ない詩人で、53の詞をながめているとそのキャパシティの大きさに今さらながら驚く」と谷川の仕事を高く評価しています。
荘厳ミサ(ミサ・ソレムニス) ハ長調 K337
W.A.モーツァルト
ザルツブルクで書いたモーツァルト最後のミサ曲です。用途、目的などは不明ですが、作曲された1780年の3月19日に当たった枝の主日(復活祭直前の日曜日)のためと推測する向きもあります。ハ長調という調性やヴィオラを欠いた楽器編成、また「ソレムニス」《荘厳ミサ》という呼称とはうらはらに、実質的には「ブレヴィス」《小ミサ》に近い簡略した構成などからはザルツブルク色が濃厚ににじみでています。しかし一方、各章ともここには従来の〈ザルツブルク・ミサ連作〉にはなかった目新しい点や様式の混在が指摘され、自立の転機を目前にしたモーツァルトの精神状態を映しているとも思われます。なおこのミサ曲はオペラ「イドメネオ」上演のため滞在中のミュンヘンから、当地のバイエルン選帝侯カール・テオドールに、自らの教会音楽の力量を十分認識してもらうため、ザルツブルクから父レオポルドに総譜を送っ手くれるように依頼した作品のひとつでもあります。
「日本の四季」
編曲:飯沼信義:平吉毅州
日本の叙情歌曲50曲を合唱曲に編曲するにあたり、二人の作曲家、平吉毅州と飯沼信義は気負いこんで仕事にとりかかりましたが、その過程で、どれだげ原曲に忠実に没頭できるかを謙虚に探る姿勢に徐々に変わっていったといいます。二人はこの編曲の仕事を通して、あらためて先人達が残してくれた遺産の素晴らしさを、再認識させられました。そのため作曲の立場よりは、むしろ演奏者、鑑賞者の立場で原曲の周辺に近づこうと、雑な音を持ち込まず音を少なめにし、原曲の鼓動を探り、その波動が連れてくる光や色や香りといったようなものを捉えようと努めました。飯沼は「時代を越えて人々に愛慕される作品というものは、第一、とてつもなく「寛容」で「控え目」で、聞き方歌い方について、「これしかない!」というふうに「決め」や「押しつけ」で迫ったりはしないものだということを思い知らされた。」といっています。今日、演奏する9曲は皆様おなじみの曲ばかりです。どうぞご一緒に口ずさみながら、お楽しみください。