ごあいさつ
会長 小松登希男
本日は第45回岡谷合唱団定期演奏会にようこそおいでくださいました。
昭和28年創立以来、沢山の仲間に歌い継がれ46年を経ました。世相の移り変わりとでも申しましょうか、人々は豊かさの中に埋没し、ひたむきに合唱を求める人も少なくなってきたのか、かつてアマチュアは大人数を理想としてきた合唱活動ですが、岡谷合唱団もまたその例外となり得ず、一頃の大人数合唱団の時期は懐かしい夢なのかなと思わざるを得ません。
豊かさはまた私たちの環境を大きく変えてくれました。ホールも楽器だよと願望してきた、それも実現しました。
今年で8年目となる松本でのサイトウ・キネン・フェスティバルもついこの間12日に総てのプロが終わりました。居ながらにして世界の小澤征爾先生の音楽にひたれる喜び。故武満徹先生の作品をサイトウキネンのトップアーチストの演奏で聴くことができる。こうした環境から培われた若者たちがまた歌い継いでいく。明るい未来に思いを託しステージ立つ私です。
林 光(Hikaru Hayashi)
1931年東京生まれ。作曲家。尾高尚忠、池内友次郎に師事し、1951年東京芸術大学に入学、53年に退学する。同年間宮芳生、外山雄三と「国民音楽の創造に役立ちうるすべての活動」を目的とするグループ「山羊の会」を結成した。同年作曲の日本民謡を用いた〈交響曲ト調〉で芸術祭賞、〈管弦楽のための変奏曲〉で尾高賞を受賞。これら民族主義的傾向のオーケストラ作品の後、林はテクストを持つ音楽や劇場音楽へと向かい、岩田宏の詩に作曲した混声合唱のための〈不死馬〉、木原孝一の詩による混声合唱と朗読のための〈レクイエム〉などの合唱音楽、オペラ〈あまんじゃくとうりこ姫〉、テレビ・オペラ〈うらしま〉などを作曲し、現在に至る作曲活動の基本路線が敷かれた。原民喜の詩による混声合唱のための〈原爆小景〉は反戦・平和を願う林の代表作であるとともに、日本の合唱音楽の傑作の一つである。1988年、爆発的人気を呼んだ俵万智の話題の歌集「サラダ記念日」などからの数首を合唱曲に作曲した〈コメディア・インサラータ〉が、岩城宏之の指揮で東京混声合唱団により初演された。彼が俵流言語の構成による短歌に興味を持っていたところ、岩城もたまたま「サラダ記念日」を読んで好きになり、著者と対談したこともあり、岩城が音楽監督を務める東混の委嘱として作曲化が実現した。「インサラータ」はイタリア語でサラダの意味。作曲にあたって「16世紀ごろのマドリガル(多声歌曲)・コメディーを現代風にして みた。歌の気持ちを増幅して叙情性を強調するのではなく、現代語の31文字がバランスよく 組み立てられているおもしろさを、音楽的おもしろさに置き換えたかった」という。
詩(し)は刺(し)であり、
また志(し)である、といわれる。
歌もまた、刺であり、
志でありたいと、ぼくは思う。 林 光