ごあいさつ
幹事長 小松登希男
本日は、第43回定期演奏会にお越しいただきまして誠にありがとうございます。
今年2月、作曲家武満徹先生が急逝されました。心からご冥福をお祈り申し上げます。
岡谷合唱団が関屋晋先生を常任指揮者としてお迎えして以来、折に触れ、深く敬愛する武満先生のお話しをして頂きましたが、さて作品を演奏するということになりますと、その難しさについ後込みをしてきてしまいました。今回は武満先生をお偲びし、少しでも先生の想いにお近づきできたらとの団員総意により、第3ステージに武満作品を取り上げました。
第1ステージは『展覧会の絵』などで皆様ご存じのムソルグスキーの『聖ニコラス・ミサ』ですが、広大なロシアの風土と、民族性を漂わせる興味深い作品で、本邦初演かとおもいます。
第2ステージは1960年代の歌に思いを託し、会場の皆様と共に、それぞれの人生を振り返りながら、21世紀に向けてのメッセージを発信しようと、舞台構成に若手団員が挑戦します。
レパートリーも多岐にわたり、中身も濃く深くとこの1年取り組んでまいりました成果をお聴きくださり、共感していただけるものがございましたら誠に幸甚でございます。
『聖ニコラス・ミサ』
1990年8月20日、英国ウースター大聖堂での Three Choirs' Festival において、指揮者D.ハント、同フェスティバル合唱団と王立リヴァプール響にて初演された。
このミサ曲の編曲者であるP.レーン氏は、楽譜の序文の中で以下のように書いている。
「ムソルグスキーは、曲を練り上げる中で、しばしば彼自身の初期の作品を用いた。例として、未完成のオペラ「サランボー」の中で、合唱でのカルタジニアン大聖堂の高僧を意味させるシーンの曲は、オペラ「ボリス・ゴドノフ」第2幕のモノローグの元となった。また、作品の舞台演奏版の出版には、他の作曲家(リムスキー・コルサコフが主となり、彼のオーケストレーションの能力が発揮された)の助けを借りていた。
このミサの中でも、Gloria には、完成した小カンタータ「ヨシュア」の曲を含んでいるが、曲自身はオペラ「サランボー」の1シーンの曲に大きく依っている。Kyrie とAgnus Dei には、Credo に完成した合唱曲「センナヘリブの陥落」が、またSanctus とBenedictus にオペラ「オイディプス」のオペラ風の合唱の部分が用いられているのと同様に、二曲共オペラ「サランボー」の曲が用いられている。
独特のテンポによる感情的な音楽的性格とテンポの多様性は、このミサの中に注意深く保たれ、また自然にフィットした(まるでムソルグスキーが、ラテン語によるミサの文章を常に心に留めていたかのようだったのだ!)
実際、全く偶然の一致で(成り行き上見つかったのだが)、Credo の「Et unum sanctam cathoricam... 」の箇所の曲は、ベートーヴェンが、自身の「ハ長調ミサ」で使った音形(F#の音は例外として)に従っているのである。」
ムソルグスキーの様々な曲から組み合わせたこのミサ曲で、彼の持つ様々な面をお楽しみいただければ幸いである。